後藤研究室

研究室紹介

以下の文章は2004年頃に記したもののため、一部古い情報が記載されています。追々書き換えていく予定ですので、その点ご了承ください。

始めに

数学の力を身に付けること, 優れた仕事をし, 研究者として一人前になることはとても大切なことですが, 一人の人間(教養と良識を備えた魅力ある社会人)として成長するなかに, 自ずと数学の力も備わって行くことが最も望ましいと後藤は考えています。

卓越した研究者の間には時折, 研究上の能力を除けば人としては魅力がないというか, 自分勝手で独善的な人が少なくないことは, 誉められたことではないからです。

人を信じ, いつも周りの人に対する暖かい配慮を忘れず, 切磋琢磨しながらも「助け合いながら, 共に成長して行く」のだという心の持ち方ができない人は, 後藤の研究室では尊敬されず, 歓迎もされません。

数学ができなければやはり困りますが, 数学ができればすべて許されるというのは, 我が国特有の愚かな思い上がりであると後藤は信じています。

研究内容

後藤の研究成果は次の5課題に大別される。(1) Rees代数環構造論の創始[3], (2) Buchsbaum環論の構築[5], (3) イデアルの線型自由分解とCastelnuovo-Munford正則性に関する基礎研究[6], (4) Cowsik予想への反例構成[7], (5) Rees代数のCohen-Macaulay性判定法の確立[8](引用文献番号は, 研究業績(抜粋)内の論文番号である。)

論文[3]は下田保博(北里大・助教授)との共同研究であって, Rees環R(I)の環構造(Cohen-Macaulay性, Gorenstein性等)は, イデアル I の随伴次数環G(I)の環構造とそのa-不変量の言葉で完全に記述されることが示されている。この結果は (後にN. V. Trungと池田信によって大幅に拡張されたが) , その後20年以上に渡り, Rees環研究の指針となった。Cohen-Macaulay環の拡張概念であるBuchsbaum環の理論構築は, W. Vogel, J. Stueckrad, N. V. Trung達との間で(協調的とはいえ), 激しい競争下に行われた。論文[5]には後藤の理論が最も端麗な形で集約されている。論文[6]はD. Eisenbudとの共同研究であり, Castelnuovo-Munford正則性に関する「Eisenbud-Goto予想」が提示された論文として名高い。論文[7]は西田康二(千葉大・助教授)・渡辺敬一(日大・教授)との共同研究である。symbolic Rees代数のNoether性に関するCowsik予想に歴史的な反例を提示した。この仕事は, 標数0の世界の現象を正標数の世界に帰着させて解決した点でも, 強く印象に残っている。随伴次数環G(I)のCohen-Macaulay性を判定する実際的方法の開発では, W. Vasconcelos, B. Ulrich, N. V. TrungやC. Huneke達, 世界中の同業者との数年間に渡る激しい競争の中で, 遂に他の追随を許さぬ成果を挙げるに至った[8]。この判定法も, Gorenstein性に関しては, 改良の余地があり不満がないわけではないが, E. Hyryを始め後藤の学生の一人である居相真一郎(北海道教育大・専任講師)達によって継続され, 優れた成果が挙がりつつあることは喜ばしい。Rees代数の環構造研究の内でも, arithmetic Cohen-Macaulay化の存在定理は, やはり後藤の学生の一人である川崎健(東京都立大学・助手)によって理想的な形に結実した。彼が用いた方法の中で最重要の部分は, 後藤と山岸規久道(姫路独協大・教授)によって, 共同研究の形で15年前に用意されていたことである。

最近は学生達と共に, 正則環内の整閉イデアルとGorenstein環内の優良イデアルの構造解析に従事している。興味深い理論が霧の中から次第に姿を現して来ることを大変嬉しく思っている。

研究室の活動